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それは、ミナコの予測通りであった。
シュウ姉なら昨日の今日で突っ込んで来るだろうな、という予測。彼女の気性を多少なりとも理解しているからこそ、部屋から引っ張り出されるよりは待ち構えている方が楽だと、ミナコはそう判断したのだ。
だから、何を言うのかも、ミナコはある程度考えていた。
「昨日も言ったよ、シュウ姉。あの黒い怪異は寂しかったの。帰る場所を求めていたの。それがわかったから、私が話しに行ってあげた」
「知能があったっていうの?」
「私がそう思ったの」
「感傷だわ!」
シュウは激しく言い放った。
越ミナコは、シュウ姉のことが決して嫌ではない。
隣ではらはらしているミズキお姉ちゃんのように、その時の気分で優しくなったりきつくなったりしない。カンナ姉は一見激しく映って、しかし、こういう時ならば「まあまあ」となだめに入るだろう。
良くも悪くも一貫しているな。というのが、ミナコの評価である。
一方で、ミコさんのことも嫌ではなかった。
彼女がミナコへ関わってこようとしないのは、いくらかは関わり方のわからなさだろう。しかし、ミナコが彼女の瞳を覗いた時、自分を「こういうもの」と見ているな、と印象した。
可哀想とか何とかしてあげたいといったものではなく、こういうもの、という見方。
それはミナコにとって、中途半端な優しさを振りかざすよりも、余程慰めとなり得ただろう。
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