1人が本棚に入れています
本棚に追加
この家に引き取られてからの数年間、ミナコは熱心に登校した。時に、小学校低~中学年。
その頃はまだ「面白くないな」という程度だったし、通えなければ捨てられるのでは、という思いも残っていた。
ミナコを引き取った家によっては、それに近い扱いはあっただろう。それにしても、この三坂家から捨てられると脅迫していたのは、どこまでもミナコ自身であったのだ。
そういう子供。
かつてミズキの母が ―― ひいてはミナコの義母が「難しい子」と言ったのは、そういった空気を含んでの言葉だったろう。
それでも、気分のいい日には、ミナコも家の手伝いをした。
神社の手伝い。主に掃除である。
ミナコが境内を掃除していると、時折やってきた人から可愛がられることがある。そのほぼ全員が女性なのだけれど、ミナコには、彼らの言う「可愛い」が理解できないでいた。
ボクが子供でちんまいから、ああいうことを言うんだ
越ミナコが、中学に上がっても小柄であることは事実だ。だが、それだけのことではない。
その丸顔には、二重の目元に、程よくふっくらとした頬の輪郭。個々の部位は主張し過ぎず、全体を見ての愛らしい顔立ち。
そう言ってよいものだろう。
深くかかった前髪さえ上げれば、通りすがる人々の言葉が単に義理や世辞のものではないことも、また事実であったのだ。
「はあ ……」
ミナコの、隠された曖昧に笑う顔。
それだけでも、柔らかに華やいで映る。
その扱いは、仲間内でも同様のものであった。
最初のコメントを投稿しよう!