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「ミナコ、こっちおいで」
武己カンナはそう言いつつも、両手を広げて自分の方から近付いてきた。ぎゅっと抱き寄せて、なでなでと可愛がるのである。
その姿は、つい数年前まで不良グループの一員としてならしていた人間とは、とても思えない。
ふう、とカンナはため息をついた。
「お姉さんはね、ミナコちゃんのために通っているようなものだよ」
「カンナ、年下のミズキちゃんだっているのよ?」
と、茶化すように言ったのは苫己シュウ。
「先輩!こんな人になでくり回されたくありませんわ」
「ミズキちゃんはなぁ、もっとおしとやかにしていればね」
なんですって!という三坂ミズキの絶叫も、もはやお馴染みといっていいだろう。
「ハロー。ミナコちゃん、おみやげよ」
その時々に、様々な店の菓子を持っては裏庭へと現れる瀬戸家スイ。ミナコが出てくるときには、彼女のやってくる頻度が高くなるように思われた。
「こんにちは。ああ、ミナコちゃん」
一言だけ、声を投げかけてくる大堀ミコ。直接話しかけることはほとんどないが、ミナコを中心として過ごしている仲間たちを、柔らかく見守っているような表情にも見えた。
「ミナコは可愛くていい子だものなぁ」
「武己先輩!いい加減、猫か何かじゃあありませんのよ!」
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