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気分がよかったので外へ出て、そのままつい遠くまで行ってしまった。
ミナコは両親へそう報告した。
行って帰ってきた、という、つまりはそれだけのこと。社会的には、事件も事故も何一つ起こっていないのだから、あながち嘘とも言い切れまい。
日が暮れかけていた。薄くなってきた空の雲は、鮮やかな夕焼けに色付いている。
ミナコは出迎えたミズキと二人、伏田白神社の鳥居をくぐる。そこにはちょうど両親がいた。
おかえり、と義父。
「そうか。けど、一言くらいは言っておきなさい。皆が心配するからね」
義父がミズキほどに心配した様子でないのは、子供たちがなにをしているのか知らないからだ。
「お父さんの言う通りですよ。どこへ行くか、言っておかなくちゃいけません」
そわそわしながら、そう続けたのは義母である。ミナコは不満を覚えた。
お義父さんが言ったの、そういう意味じゃないのに
しかしその不満も、ミズキと共用の自室で二人きりとなった時に比べれば、軽いものだったのだろう。
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