僕を砕く

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「仇餓鬼。あなた、やっぱり可愛いわ」 「……仇餓鬼って呼ぶな」 「可愛い。その表情、とても素敵」 「うるせえ」 「……でも……やっぱり」  泣くほど悲しませたのは、申し訳ないと思った。ごめんなさい。そう言って、婦貴子は悔しさと恥ずかしさ、裏腹に謎の安堵感に号泣してしゃがみ込む香坂の前で屈み、そっと手を伸ばして白魚のような指で彼の白い頬を撫でる。孤独が溶けだし、頬を伝っている。 「悲しんでねぇ」 「じゃあどうして泣くの」 「泣いてねぇ」 「はいはい」 「うるせえ」 「そうね」  大きな身体を抱きしめ、背中を撫でて。ぽん。ぽん。ぽん。と、軽くテンポを掴んで叩いているその姿は、まるで悪夢を見てしまい起きて泣く子供をあやす、母の姿。苦笑し、やっぱり可愛いわと言う婦貴子だが、香坂は泣きながら。彼女に、しがみつく。 「嫌いだ」 「ええ」 「お前が嫌いだ」 「ありがとう」 「世界一嫌いだ。許さなくていい」 「許すつもりなんて、最初からないわ」  でも。アマノジャクはここまでね。少し泣き止んできた彼の耳元でささやく。 「良い子ね。香坂くん。」  香坂は惚けていたが。次第に瞳を細めて涙を頬に伝わせ、言葉を絞り出す。
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