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「あ、返事した」どうやらカマをかけられたようで、気づいた香坂は苛立ちのうえに引きつり笑いをし、もう帰れと怒鳴る。しかし婦貴子はいやよと幸せそうに微笑み言って読書に戻る。
「あなたがどこかへ行けばいいじゃない」
「俺は委員の仕事でここに居なきゃなんねんだよ」
「委員やめればいいじゃない」
「アンタがうせれば済むことだろ」
「わたしは好きで図書室に来てるんだもの」
「家帰って読め」
わたし、家がないの……。視線を落とし、悲しげな顔をする彼女に、センスのない嘘をつくなと言い返す。ついでに嘘をつける心もないの……。ため息をついて悲しげな顔をする彼女に、それも安い嘘だなと言い返す。信じてくれる人が居ないからそうなったの……。目頭を押さえ、悲しげな顔をする彼女に、とうとう香坂は冷や汗交じりに黙った後。問いかけた。
「アンタ、ホントなんなんだよ」
すると嬉しかったようで、パッと笑顔に戻って言う。「あなたの一個、先輩!」。香坂はジト目を向けていたが、本に目を通しながら会話を続ける。
「何が目的で、図書室なんて来てる」
「本を読みに」
「本当は?」
「仇餓鬼に会いに」
「さらに言えば」
「仇餓鬼と喋りに」
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