4人が本棚に入れています
本棚に追加
ため息をつき、頬杖をついて続けて問いかける。「その仇餓鬼に、なんの目的がある」。少し婦貴子は黙った。とんとん拍子で会話が進まないことは珍しいので、なんだ。と顔をあげると、婦貴子は相変わらず笑っていたが。
「復讐」
「……は?」
「だった」
「……え?」
あ、今の返事すごく可愛いわよ! 厭そうに婦貴子を見つめていたが、相手をするだけ無駄だと考え問いかける。「復讐って」
「なんだよそれ」
「わたしね、わたし。ほら、転校前の学校で弟が、去年あなたに交流会のあと、文字通り潰されてるの。だから近づいて痛い目遭わせてやろうと思ってたのよ。そしたら」
「……」
婦貴子は手をひらつかせ、おばさまが言うように・もう参っちゃうわよと、こう言う。
「あなた。仇餓鬼が、あまりに可愛くてねえ。
それに、最高の復讐は、その復讐する人間自身が幸せになることだとも、貴方をみて。
なぜか気づいたの。」
うちの弟に言ってやったの。あんな餓鬼に潰されたあんたが悪い、って。弟怒ってた。と、笑う彼女の言葉に、香坂は眉をひそめて彼女を見つめていたが、本に視線を戻して黙り込む。
最初のコメントを投稿しよう!