私の友人

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ロシアでの豊太郎の働きは見事なものだった。流石、神童と呼ばれていただけはある。上官は彼の働きを気に入ったようだ。暫くは様子を見るらしい。しかし、この様子ならば、再び官職を得ることは難しくないだろう。これは嬉しい限りだ。  ロシアでの仕事から暫く経ったある日の夕暮れ、上官は豊太郎を呼び出した。労(ネギラ)いやらなんやら言っていたが、本当の狙いは違うだろう。上官は少し前から彼のことについて尋ねてくることが多くなってきた。これは私の推測にしかすぎないが、恐らく、上官は彼を本国に連れて行こうとしてるのではないだろうか。彼の気持ち次第ではあるだろうが、それには賛成する。私は上官に彼にこの国へ留まらせるものがないと伝えた。豊太郎の様子を見る限り、女とは別れていないのだろう。が、この国で朽ちさせるには惜しい人材であることは事実だ。それに、私自身も寂しいのだ。彼の性格を考えると戻ってくるだろう。  豊太郎は承諾したらしい。これで、戻って来る。恋人であろう女には悪いが、豊太郎は必要なのだから仕方がない。諦めてもらおう。  だが、私はどうやら舐めていたようだ。
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