幼女が落としたすすきみみずく

1/7
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
     鬼子母神という神様の話を知っているかい? 「母」という字からわかるように、子供を持つ女性の神様でね。でも「鬼」という字も入っている通り、元々は鬼みたいな恐ろしい母親だったという。  いや、この言い方は少し語弊があるかな? 「鬼みたいな恐ろしい母親」といっても、自分の子供に対しては優しかった。何百人も何千人も子供がいて、それを全部溺愛していたんだが、問題は「それだけ多くの子供を育てるためには栄養が必要」と言い張って、人間の子供を捕まえて食べていたこと。  そんな彼女を諭すために、ある時えらい神様が彼女の子供の一人をさらって隠した。パニックになって探し回る彼女に対して「たくさんの中の一人が消えるだけでも、それほど悲嘆に暮れるものだ。今までお前が子供を奪った母親たちも同じ、いやそれ以上だったはず」と説くと、彼女はこれまでの行いを反省。人間の子供を食べるのは止めて、人肉と味が似ているらしいザクロで代用するようになった。そして子供を返してもらった後、安産や子育ての神様になったという。  そんな「鬼子母神」を祀るお寺が、日本にいくつか存在している。そのひとつが俺の地元にあった雑司ヶ谷鬼子母神だ。    
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!