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『俺だけの大切な姫様だ』
『ふふふっ、あなたったら』
母の膝に抱き着いて泣いてる俺を無視して二人の世界が繰り広げられていることにも悲しくなって、更に俺は叫ぶように本格的な大号泣し始めたのは忘れられない記憶として残っている。
そして俺が絶対に剣術はやらないと宣言してから数年後、ルーカスが母親に『訓練所に通いたい』と言ったらしい。今まで我儘一つ言わなかったルーカスの初めての願いを叶えようと、ルーカスの母は俺の父に訓練所に通うためにはどうしたらいいのかを聞いてきた。
通常は親が騎士の息子か、実力を認められた者しか通えないのが訓練所なのだが、元騎士団長である俺の父親の口利きでルーカスはすんなりと訓練所に通えるようになった。
『何でいきなり訓練所に通いたいなんて言い始めたんだよ』
『………………強くなりたいから』
『マリーさんはいいって言ったのか?』
『俺が真面目に訓練するならいいって言った』
『そっかー。マリーさんが許可したなら俺に止める権利はないな』
マリーさんというのはルーカスの母親の名前だ。小さな頃におばさんと言ったら怒られて、それ以来俺はルーカスの母親を名前にさんづけで呼んでいる。
ちなみにルーカスは実の母親をマリーと呼び捨てだ。二人がそれでいいならいいんだけど、ママではなくても母さんとか名前呼び捨てじゃなくても親を呼ぶ呼び方なんていくらでもあるだろうにと思ってしまうのは俺が元異世界からの転生者だからだろうか。
***
そんなある日、村に買い物に出かけていた俺は王都から村に遊びに来ていた子供に『結婚するならどんな人がいい?』と聞かれた。
いきなりそんなことを聞かれて驚いたので理由を聞くと、王都にいる貴族は政略結婚で恋愛結婚ではないらしく、貴族じゃない人はどんな基準で結婚する人を選ぶのか気になったから質問したとのことだった。
「ずっと一緒にいたいと思った人とか?」
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