0.捨てる人がいれば拾う人もいる

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0.捨てる人がいれば拾う人もいる

 前世の記憶というか、この世界ではない世界のことをたどたどしい単語で話していたら『おかしなことを言う子。気味が悪い』と言われて捨てられた。  今の親は、遠くの山に捨てられて倒れた俺を助けてくれた縁もゆかりもない夫婦だ。どうしてここにいるのか聞かれた時もうまく話せる年齢じゃなかった俺は、誰か人間がいたことに安堵して泣きじゃくった。  そして一言聞かれた『パパとママは?』という言葉に一生懸命首を横に振った。それを見た女性は『じゃあうちの子にならない?』と言って微笑み、男性は俺を軽々と抱き上げて肩車へと移動させた。 (見るからに平民ではなさそうな姿の二人なのに、身元を調べようともせずにそんなことを言うなんて、俺がもし暗殺者や刺客だったり犯罪者の子供だったらどうするんだろうか)  その時は内心そう思ったものの、まだまともに歩くこともままならない子供の体力では、肩車をされてその高さに驚いたりはしゃいでるうちにそのままスヤスヤと眠ってしまったらしい。  それからはその家の子として育てられた。近所に住んでいる子供は俺より三歳年下の子供が一人でその子の母親と二人で暮らしているので、働きに出ている間はうちに預けられて俺とその子は必然的に一緒にいることが多くなった。  最初は兄ちゃんと発音できなくて『にーちぇ』と呼ばれていた。男の子にも関わらず愛らしい顔とクルクルとよく変わる表情が可愛くて、恐らくお互いの両親よりも一緒にいたかもしれない
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