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いなくなってしまった幼馴染みのことで父さんと盛り上がり、肝心なことを話すのを忘れていた。
「それもあるけど、父さんなら商人になる方法知ってるかと思って」
「エルは商人になりたいのか?」
「なりたいっていうか興味があるって感じかな」
「残念だがエルは商人になれない」
「それはどうしてだか聞いてもいい?」
なれないという理由だけでは納得できず、具体的な理由をたずねる。
「商人になるには商人の息子か、そうでないなら五歳の頃から商人に家で住み込みして働かなくては商人になれないからだ」
「五歳の頃から……」
(まだ親と一緒にいて甘やかしてもらえる年齢から住み込みで働くって、商人になるって大変なんだな)
「商人になるって厳しい世界なんだな」
「なることも大変だがなってからも大変だ。商人になっても雇われだと給料が安いし、自分で商会を作っても商才がなければあっという間に潰れてしまう」
「そっか。思ってた以上に厳しい世界なんだな。俺は雇われでどっかに働きに出られるならそれでいいんだけど……」
「ここで一緒に働くか?」
農家の朝は早い。そして体力勝負なところもあるので俺には難しいと思う。
「父さんが働いているのにこれ以上ここに人手は必要ないだろ? 今まで通り、何でも屋みたいに村の手伝いしながら町に行って仕事探すつもり」
「…………そうか」
父さんが心配そうな顔で俺を見ているが町で働くならこの村からのほうが近いし、実家からも通える距離だ。そこまで悲観することもないと思う。
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