1.俺の可愛い幼馴染み

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『いてもらって問題ありませんよ。おめでたいことですから』 『…………吐いて倒れたのにおめでたいだと?』  小さく呟く声は医者と村人には届かない。 『あっ、そういうことかい。そりゃめでたいね』 『どういうことですか?』  妻のことなのに蚊帳の外にされている夫が状況を理解できずに尋ねる。 『ご妊娠されています』 『五人新?』  そんな言葉あっただろうか? 聞いたことがないと首をかしげる。 『なにすっとぼけたこと言ってるんだい。もうすぐアンタがパパになるってことさ』 『………………え? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!』 『そんなに驚くことじゃないだろうに。もしかしてアンタ、奥さんの周期も知らなかったんじゃないだろうね?』 『……………………』  無言は肯定の証だ。 『はぁ~、そんなんで大丈夫かい? 料理と洗濯の仕方はわかるかい?』 『洗濯は見習い騎士の頃にやっていたのでできる。料理は切って焼くのなら野戦でやっていた』 『話になんないね。これからアンタの奥さんは子供の分まで栄養とって健康に過ごさなきゃいけないんだ。切って焼くだけの肉を食べるだけじゃ栄養が足りない。野菜も果物も必要だ。まずはアンタには料理を覚えてもらうよ。奥さんと自宅に帰るのはアンタが料理を十品は作れるようになってからだ』  結論付けてそう言い切った村人は、のちに俺が大人になってからも家族ぐるみで付き合いがある大切な人になった。
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