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それは本当に突然のことだった。
「そうよ! お姉さまが行けばいいのよ!」
「……は?」
食堂の前を通りかかったとき、ふと聞こえてきたのは私の双子の妹であるソフィアのそんな言葉だった。
(……え、ちょ、何処に行くの……?)
ぼうっとしていれば、食堂の扉が開く。
扉を開けた人物――ソフィアは、私の顔を見るなりにんまりと笑った。彼女のその大きな赤色の目が、やたらと妖しく光っている。
「ちょっと、こっちに来て!」
ソフィアが私の手首を力いっぱいつかんで、食堂に引っ張り込む。
前のめりになったものの、必死に体勢を立て直して顔を上げた。そこには、私とソフィアの両親が神妙な面持ちで椅子に腰かけている。
「だが、ソフィア……」
「いいじゃない。どうせ、双子なんだから。顔立ちだってそっくりだし、バレやしないわ」
肩をすくめてそう言うソフィア。……対する私は、意味がわからなくて目をぱちぱちと瞬かせる。
「あのね、お姉さま。お願いがあるの」
手を組んで、上目遣いになって。ソフィアが私を見つめる。……あぁ、またこれだ。
「――お姉さま、わたくしの代わりに辺境に行ってくださらないかしら?」
ソフィアのその一言が、私、シャルロット・ゼクレスの運命を大きく変えた。
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