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「あ……軽くなった」
「閂としての神の力じゃ。虎太郎の中に入ろうとする瘴気を閉じた。忍と武公……椿にもしてやろう」
神様らしいことも出来るのかと感心していた武公は、不意に出た椿の名に驚いて振り返った。
彼女は酷く青ざめて、ギュッと目を閉じ身体を小さく丸めている。
「椿! どうした、大丈夫か!?」
「瘴気に当てられて恐怖感が増大しておるのだろう。悪い白昼夢を見ているようなもの、すぐに鎮めてやる」
先程同様に閂が触れると、椿の身体がゆらりと揺らぐ。
武公はそれを抱きとめた。
「大丈夫か!?」
「……武公……」
ゆっくりと目を開けた椿はぼんやりとした視界の中に武公を見付けて、ほっと息を吸う。
気持ちが緩んで涙が溢れた。
「痛いのか? 苦しいか? どうしたら……」
慌てる武公に椿は首を横に振った。
「平気……怖い夢を見てた。小さな部屋に閉じ込められて、出られなくて……」
彼女にとって最も恐ろしいのは、再び閉じ込められる事だ。
その恐怖が肥大して束の間悪夢を幻視した。
武公は閂の言う通り瘴気というものは人間に耐えられるものではないらしいと感じ、ふと身玉の2人を見れば不思議そうな様子で皆を見ている。
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