神の威光と言霊と

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「なるほど、だからこそ弱く小さかったという皇天児之命(スメアマガツノミコト)が門を閉じる為の強固な閂足りうる訳ですね」 弱肉強食の門の向こうの世界では生きられない程弱かったというこの神は、300年が経とうという今でも役目を務めて門を閉じている。 人形という『形』を得てこの世界のものとしての存在を確固とし、神としての『名』を得て神と成り、そして信仰という『力』によって神としての存在を強く保つ。 全てが門を閉じ続けるために考案されたシステムだ。 優は心底感心したわけだが、閂は皮肉混じりと受け取り苦笑いを浮かべる。 神となって久しくとも、自らが弱い存在であった事を忘れたわけではない。 だから怒りは湧かないが、情けない気にはなる。 「言うのう、時久優。奈月の番だけのことはある」 「お褒めいただいてありがとうございます。彼女の番として冥利に尽きます」 口の悪さを皮肉ったつもりだった閂は、完璧な笑顔で礼を言われて毒気を抜かれた。 わざとらしくため息の真似事をする閂を他所に、打てば響く優の受け答えに気を良くした龍也が話を続ける。
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