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龍也は橘が持ってきていた荷物の中からやけに御札の貼られた桐箱を取り出し、中から一枚の写真を出した。
大変写りの悪いそこには、岩壁に丸い木戸のようなものがあるだけだ。
あるだけ……なのだが、武公はぞわりと全身の毛が逆立つような気味の悪さを感じる。
「これは……『何』だ?」
「ほう、武公はその写像に瘴気を感じるようじゃの。剣は危険を察知する知覚に優れておる。そうでなければ避けられぬからな」
見ただけで寿命を削られている気がする程の悪寒と吐き気と、本能的な恐怖……圧倒的で、抗う術さえない天災のような悪意に似た何かの奔流。
「これが瘴気……」
「影見の2人も感じるか。幼い者程敏感じゃからな」
虎太郎と忍も青い顔をしている。
虎太郎の方はそれだけでなく、写真の中に明確な何かを見たようで、がたがたと震えていた。
「この向こうは……ゾンビなんかよりもっと怖いものが……」
「影見にはまやかしを見抜く力が備わっておる。照魔鏡というものがある通りな。この門の向こう側に何があるのかを感じ取ったか。未熟者でも役目を継ぐだけのことはあるのだな」
大小様々に蠢く禍ツ神を幻視し怯える虎太郎に、閂は指先を伸ばして頭に軽く触れた。
すると触れたところにほわりと小さく白い光が灯る。
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