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「それでもわざわざ進んで呪術を学んでらっしゃるのは、やはりご両親が亡くなった事と関係しますか?」
祖母と両親を亡くしていることによって影見の力を使える者はいなくなった。
虎太郎が育つまでの助けとして龍也が動いたのではないかと優は推察したのだが、龍也は首を横に振る。
「それもあるけど、それだけじゃねえよ。俺は門を無くす方法を探してるんだ」
3組のお役目達が目を見開く中で、椿は怯えたように身体を固くした。
ここを追われれば行く宛のない彼女にとって門がなくなるということは、即ち番としてここに居る必要が無くなってしまう事に他ならない。
「それは……既に何らかの目処が?」
「300年も叶わなかった事だ。そう一朝一夕ってわけにはいかないさ。まだ終わりは見えねえ」
優に再び首を振った龍也を見て、椿は小さく息をついた。
きゅっと固く冷たく凍った心臓が安堵で緩む。
「簡単に出来るくらいならもうとっくに誰かがやってるしな。まあ門を開けた当時は閉じるのが精一杯だった。世は大飢饉のさなか、しかも門から出て来ちまった禍ツ神をどうにかしなきゃっていうのでてんてこ舞いだ。おかげでかなりの術者が亡くなったらしい。更にこの失敗で国の陰陽師に対する不信感は増大し、明治に入っての天社禁止令で壊滅状態。残されていた記録も殆どは門や神さんを守るための術に関することで、様々あったという呪術は失われていた。特に門を開けた方法については徹底的に消し去られたんだ」
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