役目と役割

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「知ってるかもしれないけど、身玉家は代々女系なの。だから父が番。父の家系が代々時久の執事をやっていた家で、私は小さいうちからよく時久家にお邪魔していたわ。だから父方の祖父が呼ぶのに倣って敬称をつけているの。周りから見ておかしいでしょ、執事の家の子が主人の家の人を呼び捨てるなんて」 「僕としては名前で呼んでほしいんですが……それは二人きりの時だけと断られてしまって」 ほーと気の抜けた声を上げた武公は、ぽつりと呟いた。 「執事って、実在するんだな」 「そりゃするだろうよ……見たことはねえけどな」 呆れた顔を見せた龍也に向かって、武公は空中に手をわたわたと彷徨わせて説明する。 「こう……なんというか……ドラマとかそういうものの中にしか居ない生き物だとばかり」 「武公、お主は神を目の前にしておいてそこに驚くのか……」 じとっとした視線で彼らを見守る閂を他所に、虎太郎が興奮気味にまくし立てた。 「アレだろ、お坊ちゃんってリムジンとかロールスロイスとかのでけえ高級車乗り付けたりするんだろ!」 「そういう車は日本の道路事情には向かなくてね。普段は国産の一般的なサイズのエコロジー車かな」 どーんとした大型の高級車を期待した虎太郎は返ってきた言葉にがっくりと肩を落とす。 いくらなんでも大衆車とは思わなかったのだ。
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