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「一般的なエコロジー……」
「環境問題は企業的にも大切だから」
気落ちした様子の虎太郎を愛らしく思いながら、優が穏やかに笑う。
高級車や大型車両で威圧感を出しているような成金とは異なる、本物の企業家とは機能的で無駄のないものを好む。
少なくとも優の理想とする人間は外観や周りからの評価よりも、本質を評価する人間だ。
「二人きりの時だけは名前で呼ぶって」
小さく呟いた忍はうっとりとした顔で何かを妄想しているらしい。
武公がそれに気付いて椿を見れば、似たような表情で頬を染めている。
これが世にいう恋に恋するというものなのだが、脳筋には今ひとつ理解しがたかったために首を捻って難しい顔をした。
「まったく、あなた達はすぐに話が脱線するのね」
ふぅとため息をついた千代の声ではっと一同は我に返る。
「まあ良いではないか、少なくとも吾は楽しいぞ」
この本殿に閉じ込められ限られた者としか会うことを許されない閂にとって、くるくると移り変わる会話は興味深い。
年寄り達とは異なり、若い者達の賑やかさは会話の端々に生命そのものの輝きを感じさせる。
長く生きたが故の黄昏を思って、人形の姿をした神は浮かべた笑みに僅かな苦みを忍ばせるのだった。
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