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神の威光と言霊と
「そういえば優、訊きたいことがあるのであろう。どうせ小難しい事じゃろうから、龍也に訊くがいい」
ふと閂が思い出し、サラリと丸投げを決め込んだ。
不満そうな顔を見せながらも従うあたり、龍也は面倒見が良い。
「何が知りたいんだ?」
「閂さまの動力……という言い方はおかしいですよね。しかし一説によると神は認知され信仰されることで力を得て、認知度が低い程弱いと聞きます。ならば秘匿される御柱である閂さまがこうして動ける程のお力を持つのは不自然に感じます。そのお力の源が何なのかが気になるのですが」
龍也は小さくほぅと呟く。
お綺麗なだけの坊っちゃんかと思ったが、それだけでは無いらしいと優に対する見方が少しばかり変わった。
「この神さんの名前は覚えてるな?」
「勿論。皇天児之命のお力をお借りしているのですから当然です」
「その名前、一つには天児っつうお守り人形の皇って意味があるが、他にももう一つ。天児屋根命って神様を知ってるか?」
優以外の者達は聞き覚えのない名前に首を傾げる。
そもそもこんな事に巻き込まれなければ神仏に興味も無いのだから、知るわけがない。
「日本で最も有名な神様を天の岩戸から引っ張り出した神様の内の一柱だ」
「素晴らしい祝詞を上げて天照大御神のお心を鎮めたという言霊の御柱ですね」
「そう。春日大社でも祀られる由緒正しい神様だぜ。どっかの神さんとは違ってな」
龍也の頭に閂が放り投げた木製の茶托がクリーンヒットして、彼は頭を抱えた。
口は禍の元だ。
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