神の威光と言霊と

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「三種の神器ですね」 正確には剣、勾玉、鏡だが、勾玉はその形が胎児のようだという事から一部では身玉と呼ばれることもある。 同様に自らの影、つまり映した姿を見る道具であることから、古くは鏡を影見と呼んだと謂れてもいる。 「そう。皇天児之命(スメアマガツノミコト)って通りこの神さんは皇室所縁(ゆかり)でもある。門を開けた陰陽寮が中務省管轄だったってだけでなく、当時の上皇の肝入りでの計画だったから、当然責任の一部もそこが被らなきゃならんよな」 「だから宮内庁書陵部がこのお社の管轄なんですよ」 橘の言う通り、本来であれば神社は神社本庁の管轄であるというのに、ここだけは宮内庁の預りだと言う時点でかなり異例の扱いだということがわかる。 からくり人形でも無いのに勝手に動く神様(人形)がいるのだからおいそれと誰彼構わず教えるわけにもいかないのは当然ということだ。 奈月は大きくため息を吐いて、呆れ顔を橘に向ける。 「ホントにアホな事してくれたもんですよね。それもアレ? 幕府と朝廷のアツレキってやつなの?」 「まあそれも含めてなんでしょうね。時の上皇は鎖国下でも限られた国との貿易を幕府が管理し、その利益を独占している事に不満を持っていたようですし。大きくなりすぎた幕府の力を疎ましく思っていたのは事実です。ただ享保の大飢饉では西の方がより被害が大きかったのも事実なので、背に腹は代えられなかったというのもあるのだと思います」 これがもしも彼らの思惑通りに成功していたなら、朝廷と幕府の力関係は大きく変化しただろう。
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