神の威光と言霊と

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「でもさ、なんでよその世界が良い所だって思ったんだろ。開けたらいきなり恐竜とかゾンビみたいのがうじゃうじゃしてたらとか考えなかったのかな?」 虎太郎はうーんと唸って首を捻る。 日本中がゾンビに占領される様子を想像して、どうやったら生き残れるだろうかと余計なことを考えた。 「どうやら例の上皇と陰陽寮の上役の何人かが夢を見たらしい。扉を開けろっていうような。それを神の啓示だと信じ込んだ。まあ昔の人間だしバリエーション豊かな想像も難しかったんだろうけど、それ以上にもう極限だったんだろうな。立場のある人間だから食えないってことはなかったろうが、市井ではバタバタ民が死んでゆく。反感も強かっただろう」 優は龍也の返答にふむと考えるような仕草をしてから、話を神器の事に戻した。 「皇家の事情はわかりましたが、三種の神器は信仰を集めるものではありませんよね。皇権の象徴(レガリア)であり、それぞれが神器として日本書紀や古事記に由来を持っていますが、それ自体を信仰する宗教的なものは……」 「坊っちゃん、結構よく調べてるな。その通りだよ。だが神事で使われる三種の神器ですらレプリカ、では本物はどこに収められている?」 三種の神器は即位の礼という最も大きな儀式の際ですら形代、要はレプリカを使用する。 つまりその代の天皇ですら実物を目にしたことがないという代物なのだ。
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