塀の外に吹き荒れる風

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 カシシーヴ家の長女・ティルフェットの結婚が後ろ倒しになった。許婚の家からの申し入れがあったのだ。理由は明らかだった。カシシーヴ家には、吹き飛ばされるほどの向かい風が吹いていた。  ティルフェットは兄を愛していたし、兄の苦悩を自分のことのように悔しく思っていた。心優しい少女だった。だから思い悩む素振りは誰にも見せなかった。  それでも、リュヤージュの罪悪感は彼の心を貫いて引き裂いてしまうほどだった。政略結婚とはいえ、ティルフェットは許婚とよい親交を持っていた。許婚からの手紙が届くと、ぱっと明るい顔をして、頬を染めてはにかむ妹をずっと見てきたから。  復讐が完了したことにすれば、カシシーヴ家の名誉の一部でも取り戻せるだろうか。
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