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煌めく謎と旅の夢
リュイは懐から、黒い貴石のペンダントを取り出した。二つのランタンの火が揺れ、青年たちの顔にオーロラのような反射光がきらめいた。
美しい品だった。貴石は寸分の歪みもなく楕円に磨き上げられている。虹色に輝く薔薇は、貝の内側の光沢を丹念に埋め込んだものだ。花の中心から外側へ向かって色が薄くなり、花びらの重なりを表現している。
「呼ばれていると思わないか? 迷いながらこれを手にしたとき、きみには切り拓くべき運命があると悟った。そこで馬鹿な考えは捨てたよ」
「運命が、僕に」
「きみは特別な人間なんだよ」
「……ああ」
掠れた声でリュイに応じてから、実感がシルに追いついた。なぜ生まれたばかりの自分はこのペンダントを持たされていたのだろう。魅惑的な謎。解き明かさないまま人生を終えるには、あまりにも強い光を放っている。
「これはきみのだ。貸してくれて、ありがとう」
リュイが差し出し、シルが受け取った。
シルは生まれて初めて、この貴石の重みを手のひらできちんと受け止めた。シルの心を後押しするように、虹色の薔薇がきらめく。
「お守りのつもりだったんだ。贈り物じゃなく」
シルが言い、リュイは春の陽射しのようにあたたかく微笑んだ。
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