友情が閉ざされる瞬間

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 翌朝、洗面の水に映った目元が腫れていないことにシルは安堵した。眉が張り出し鼻筋は太く通った顔立ち。アーモンド型の大きな瞳を漆黒の長いまつ毛が縁取る。  この国の人々からシルは「異邦人」と指を差される。  周囲の人々の、ブロンドやプラチナや亜麻色の、軽やかな色彩の髪。明るい虹彩。シルの目からは、みんな聖像に似た繊細な顔立ちのように思われる。  リュヤージュ様は、両親譲りのブロンドに、すみれ色の虹彩の瞳は金色のまつ毛にふわふわと囲まれている。幼い頃、人々は口を揃えて「天使のようにお美しい」と褒めそやしたものだ。  そんな美少年と自分のような異国の姿の人間が兄弟のように過ごす様子は、確かに異質だったことだろう。シルは自分の思い上がりにまた唇を震わせ、眉尻を下げた。  今日からは使用人として、リュヤージュ様に生涯をかけてお仕えするのだ。目が覚めた瞬間にシルはそう誓った。生まれ変わったような心地だった。  今朝見た夢は、少年時代の思い出だった。
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