その参拾八

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その参拾八

ずいぶん前からよく通る道がある。 そのお家はおじいちゃんが一人で住んでいて、庭はよく手入れがされてあって季節の花が目で楽しめる。 庭に面した磨りガラス越しにおばあちゃんが窓の外を眺めていた。 数年が立ち、庭が荒れだして来た。 おじいちゃんは、どこか体の具合でも悪くされたんだろうか。 磨りガラス越しに今日も、おばあちゃんが立っていた。 それから年数が立ち、「売家」の看板が貼られた。 今も、磨りガラス越しにおばあちゃんは庭の外を見ていた。 いつ通ってもおばあちゃんは窓に立っているんだ。 ずっと…。
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