その肆拾

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その肆拾

博物館での時のこと。 実測室に移り、席を作って頂いた壁面に奇妙なお札が貼っててあった。 お札自体は古く端の方は痛みボロボロである。 目玉がたくさん描いてあるお札とキョンシーに貼ってそうなお札の二枚である。 棚を移動した時にその札が露見した感じである。 「このお札なんですか?」 ワクワクして聞いてみた。 山伏先生は厳しめな顔で 「剥がさないでね。」 と、言った。 「何でここにお札が貼ってあるんですか?」 「剥がしちゃダメだよ。」 何度聞いても、理由を教えてくれない。 古株の先輩に聞いても首を傾げている。 今までずっと棚の後ろにあったために知らないとのこと。 デスクに座り上を見上げるとお札がある。 見るからに道教の方のお札なんだろうか。 めくりたい衝動に借られるが、我慢した。 ある時、土器を実測していると視界に黒いものが飛んだ。 何度も (飛蚊症かな。) 目が疲れたかもしれんと。顔をあげた。 お札の回りから黒い拳大の塊が飛んでいた。 いよいよ目が疲れているのか。 それは、くるりとまわると歯を剥き出しにし 「イーッッッ」 と笑いお札の中に消えていった。 小さな生首だった。 例えるならば、真っ黒クロスケの真ん中におっさんのしわくちゃな顔があるような感じだろうか。 そるが、お札を何度も出入りしている。 「…札の効力消えているじゃないか。」 これを出さない為にお札で塞いでいるんだろうか。 数か月後、お札は棚の裏に戻った。 そう、私のデスクは移動したのである。 理由は教えてもらえなかった。
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