その肆拾壱

1/1

43人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ

その肆拾壱

博物館での時のこと。 私はなぜか実測室では計三回席が変わった。 扉の前の席でのこと。 顔を上げたら廊下へと続く扉が見える。 ので、足音とドアノブを回す音が聞こえやすい席でもある。 ある時、カチャリとドアノブが回す音が聞こえた。 あれ?足音聞こえなかったな。 そして続く扉が開く音がしない。 不思議に思って顔をあげた。 扉が僅かに開いている。 誰もいない。 いや 視線を下に向けた。 お茶運び人形というのだろうか。 それが僅かな隙間に挟まるようにいる。 古い人形がそこにあるので驚いた。 先生か誰かの悪戯だろうか。 ギギ、と人形の首が上に向いた。 悲鳴をなんとか圧し殺した。 こういう手合いは無視に限る。 着物の袖から見える白い手はぶよぶよしており陶器のそれではない。 明らかに肉感がある。 (良くできた人形…ではないよなぁ。) しかし、顔は陶器である。だが顔と首の境、首は幼児の肌色と肉感をしている。 吐き気がした。 ギギ、人形は部屋を見渡すように顔を動かした。 目が合っては大変だ。 そう思って慌てて顔を伏せ図面を凝視した。 人形は目が合う物がいないと判断したのか、ギギと音を立てて廊下へと去っていった。 詰めていた息を吐いた。 あれは…なんだったんだろうか。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加