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その肆拾二
博物館でのこと。
私の席は窓側に移った。
とある古民家の屋根からたくさんのお札が見つかったという。
明治あたりのものだという。
昔の村長の家では、村人全員のお札を纏めて俵につめ藁葺き屋根裏になおすそうだ。
村人全員の安全祈願の為だそうだ。
大抵は囲炉裏の上にぶら下げる為に煤けているか、もしくは屋根裏にある為に藁葺きと一緒くたに解体の際に燃やされる為に現存で見つかるのは珍しいという。
俵の数は三つ。
その中にぎっしりと木札と紙の札が詰められている。
そのお札の書き取りを言い渡された。
神社の名前か寺の名前。
日付、梵字、祈願名等々。
四百枚か五百枚はあったと思う。
年号を見ると幕末のものもあった。
なんとか、文字を読み取りそれを紙に写す。
木札を手に取った。
ぞろり、と木札からミミズのような細長いものがのたうち回るように這い出できた。
「ひっ」
しかし、投げ出すわけにはいかない。
なぜならば貴重な木札だ。
放り出して割れたりしたら大事である。
恐る恐る机の上に置いた。
太陽の日差しに焼けるように消えていった。
(札の効力がまだあったのか。)
年号は幕末。
祈願は国家安泰。
(国家安泰……それとはまた別物が入っているような。)
その年号の木札からは、同じようにミミズのような細長いものが出てきていた。
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