その参拾五

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その参拾五

前話の続き。 同期の結婚式の時には私は養成所を辞めていたのだが、博多に来ることがあれば会おう。と姐さんから連絡が来た。 姐さんは結婚式には仕事で参加できなかった為、話を聞きたい。とのことだった。 養成所が終わったら、あのカフェで。 と、言うことで行ってみると姐さんだけではなく同期メンバーもいた。 こちらとら夢を諦めた者である。 アウェイ感半端ない。 二年も立つと同期は半数以下辞めて行ってる。私もその一人だ。 話は盛り上がり、ふ、とおばあちゃんが霊媒師の子のことを思い出した。 「そーいやぁ、◯……あれ、名前度忘れした。」 「ひどいなぁ。友達の名前を忘れるなんて」 「ほら、髪の毛こんくらいで、××から通ってた子がいたやん」 ◯◯ちゃんは、グループの中心人物で明るいキャラだった。 「ああ、◯……あれ、なんだっけ?」 姐さんも首を傾げた。 それに、数人加わるが誰も彼女の名前を忘れたのだ。 人物像は皆一致している。 なのに、名前だけが記憶から抜け落ちている。 1人ならいざ知らず、五人全員だ。 ◯◯ちゃんの方が辞めたのは早かった。 だが、二年近くも会っていてグループの中心にいた子の名前をそんなに忘れるものだろうか。 「写メとかないかな?」 「たしか、写真嫌いだったから撮ってないような気がする。」 まあ、いつか思いだすだろう。 そう思ったが、いまでも彼女の名前は思い出せない。
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