その参拾七

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その参拾七

だいぶ前の話し。 友人から旅行の写真を見せてもらった。 観光地の写真を見ていると、一枚の写真で止まった。 明るい外での写真を連続で撮っている。 写真には笑顔の三人がいる。 「ねぇ、なんでこれ背後が真っ暗なの?洞窟でも入った?」 だが、次の写真は同じアングルだが、庭園をバックに撮ってある。 間のその一枚だけが、風景が違うのだ。 「ん?それはあそこだから…あれ?ここどこだっけ?」 洞窟はなかったし、館内にも入ってないし、でも皆で撮ったならこの前と同じ場所だし。 と友人は首を捻っている。 その写真をよく見てみた。 「あ、これ心霊心霊だわ。」 ほら、と真っ黒い部分を指した。 「ここに、たくさん手が出てる。上の方はおばあさんの顔かな?」 友人に写真を渡した。 「え!やだっ。怖い」 「さっきは、何も写ってなかったのに!」 「ほら、心霊写真てっ、霊感がある人が見たら霊が浮き出てくるてっいうし。」 「うわぁ、はっきりしてきた。」 「てかね、この写真だけ真っ黒なのになんで気がつかないかね?」 「言われるまでなんとも思わなかったわよ。」 これ、あげる。 と写真を押し付けられたが、いらない。と返した。 机の上には、三人の背後にたくさんの白い手と老婆の顔が浮かぶ不気味な写真があった。
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