その肆拾弐

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その肆拾弐

18時、電話がかかってきた。 知らない番号である。 出てみた。 「こんばんは。××商事の人事課の鈴木と申します。山本さんでしょうか?」 「いえ、違います。」 間違えてますよ。と電話を切った。 ただの間違い電話である。 一ヶ月後、18時に電話がかかってきた。 「 こんばんは。××商事の人事課の鈴木と申します。山本さんでしょうか?」 「いえ、違います。」 切ってから、あれ?と思った。 前にも同じ電話を受けとったな。と 一週間後、18時に電話がかかってきた。 「 こんばんは。××商事の人事課の鈴木と申します。山本さんでしょうか?」 …だから、かける番号間違えてますよ。 数ヶ月に一回鈴木さんから間違い電話がかかってきた。 番号が似ているんだろうか。 数年後、居間を通っていると親父殿のスマホが鳴った。 「 こんばんは。××商事の人事課の鈴木と申します。山本さんでしょうか?」 スピーカーオンにしていたらしく、声が聞こえて、思わず立ち止まった。 同じ声、同じ内容。 時計を見ると18時である。 かたぱっしから山本さんを探しているんだろうか?
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