その肆拾参

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その肆拾参

だいぶ前の話。 霊を呼び出すという簡単な降霊術がある。 酒を注いだコップを誰もいない場所に置き 「どうぞ、お飲みください。」 と、言う。 すると、そこに人が座るという。 もしくは、30分後には味が抜けて水になるという。 味が抜けるのは、霊が酒を飲んだ証拠らしい。 やってみた。 酒はなかったので甘酒だ。 まあ、酒の文字が入っているから大丈夫だろう。 時間まで本を読んでいた。 ふと、甘酒を注いだコップを見た。 減っていた。 並々注いでいた甘酒は半分以下に減っている。 怖くなったので、白猫の鈴ちゃんを抱き締めた。 「鈴ちゃん、怖いわ。」 鈴の頬が若干ピンク色である。 そして、なにより甘酒くさい。 「鈴…甘酒飲んだ?」 「うなん?」 鈴は上機嫌で甘えてきた。 なんだ、霊が飲んだんじゃなくて、鈴が飲んだのか。 がっかりしていると、目の前でコップが倒れた。 二回目はやらなかった。
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