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第11話
「...やっぱ、どの場所も酷い状況なのか」
特徴的な声をした男性が、身近に起こった事件などについて語っていた。その中でも、非常に役に立つ情報があった。ゾンビの弱点についてだ。あいつらは頭を破壊すると、活動が停止するらしい。思い当たる節がある。2階から下に落としたゾンビの事だ。あいつも頭部を破壊してから動きがおかしくなっていた。
「そうか。狙うなら頭部の破壊か...」
これは重要な情報だ。覚えておこう。それ以外に気になる情報といえば、市役所に人が集まっているらしい。どうやらまだ緊急の避難所として機能しているようだ。
「でもな~。こういう場合の集団生活って絶対ヤバいだろ...」
映画などでもよくあるパターンだが、人が一ヶ所に集まると必ず問題が起こる。食料問題などもそうだが、それよりも人間同士のトラブルの方がよっぽど恐ろしい。市役所への避難は最終手段として覚えておこう。俺は、ラジオを流しながら眠ることにした。
翌日。朝食を食べ終えて、十分に休息した俺は、マンションの散策を再開する事にした。前回の散策で鍵が掛かった場所を1つ1つ確認して回る。105号室の前を通ろうとしたところ、妙な物音が中から聞こえた。感染者が中で暴れているのだろうか?
「...何か嫌な予感がするな」
自分の中の直感に従い、体をドアの外側に隠してから、勢いよくドアを開けてみた。瞬間、ドガァッ!!と金属製のバットが地面に叩きつけられた。ゾンビじゃない。相手は生きた人間だ。
敵の姿をはっきりと視認する。年は俺と同じくらいだろうか。くすんだ金髪の髪に、血走って充血した目をしている。とても正気の人間の顔だとは思えなかった。
「死ねやああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「!?」
男が正面から突っ込んでくる。俺は持っていたシャベルを使いなんとかバットを受け止めた。ちょうど鍔迫り合いのような状態に両者共に突入する
「ちいっ!!」
「...っふ!!!」
男のバットを右側に弾き飛ばし、その反動で男の左足部分をシャベルで叩き付けた。
「がああああああああああああああああぁぁ!?」
園芸用などに使われるシャベルは頑丈で強力だ。実際に第一次世界大戦などでは近接武器として採用されていたぐらい信用があるからな。
「おああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
シャベルを正面に抱え、玄関先で苦悶していた男に全力のタックルを食らわせる。男はわりと簡単にリビングの方へとぶっ飛んで行った。俺はそのまま男に追撃を食らわせるべく全力で走り出す。
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