第2話

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第2話

「ハアッ!ハァ!ハァ!!」  大学校内にある駐輪所に向かって全力で走る。そこには俺が通学用に愛用しているバイクがある。それに乗ってこの地獄から脱出する事が今の俺の目的だ。  校内の状況はもう最悪だ。人を襲う奴の数が段々と増えている感じがする。一刻も早く乗り物を確保しなければ命が危ない。  それにしても、本当に異常な光景だと俺は思う。体中に歯型を付けたやつ、腕が無いやつ、血塗れになったやつ、見るからに異常な状態のやつらが、次々と人を襲ってやがるんだ。これを地獄と言わず何というのだろうか。 「ああああああああああああ!?!? 」 「助けてえええぇぇぇ!!!!」  同級生が多くの人間に嚙みつかれているのを目にしてしまった。あれではもう助からないだろう。感染者の大群がこちらに集まる前に、俺は目的地に向かって全力で走った。  ...駐輪所に着いた。俺のバイクまであと少しだ。 「...?」  慌ててその場でストップする。俺のバイクの目の前に、血塗れの人間が倒れていたからだ。 「...こいつはどっちなんだ?」  人なのか? それとも感染者なのか?男の状態をよく見てみると、体中に噛み傷があり、片腕が欠損していた。 「...死んでるよな?」  この男をどかさないと、バイクを出発させることが出来ない。どうするべきか悩んでいると、異変が起きた。  ___死体が、痙攣している。  ピクピクと魚のように痙攣した後、ゆっくりとだが、死体が起き上がった。 「...おああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 「...間違いない。こいつら、ゾンビだ」  1歩2歩、よっくりと後退する。俺の考えは何一つ間違っていなかった。  ___噛まれたら、感染するんだ。  右腕が欠損し、目が白く濁った死体ががこちらにフラフラと近づいて来る。 「ちくしょう。...どうする?」  あまりにも異常な光景に、体が思うように動いてくれない。軽く深呼吸をして、乱れ始めた呼吸を元に戻す。 「...ふうう。落ち着け。大丈夫、大丈夫だ」  とにかく噛まれたらヤバい。何かで対策する必要がある。俺はバックから大きめのビニール袋を取り出した。スーパーとかで手に入るLサイズの袋だ。これを頭に被せれば、多分噛まれない。...確証なんかないが、やらないよりはマシだろう。 「っ!!」  右側から回り込んで頭にビニール袋を被せる。...成功した。これで多分噛まれる心配は無い。 「ふ!!!!」  その場で軽くステップを踏みながら、重心を乗せた右足で男の膝を蹴り飛ばす。グチャッとした嫌な感触がした。狙い通り男が転倒する。そのスキに急いでバイクに駆け寄り、キーを差し込んだ。  ブロロロロ!と、エンジンが始動する。そのままアクセルを全開にし、目の前で転がっているゾンビに向かって飛び出した。肉が弾け飛ぶような音と、形容できないような嫌な感触をハンドルに感じたが、気にせずに俺は校内から外に脱出した。
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