月夜のアロエ

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 私に残されたのは彼の犬のベンジーと、カメラやその他彼の衣類や数少ない私物だった。  一年ほど泣いて暮らした。    彼の読んでいた本、二人で行ったレストラン、ダサい彼を何とかしたくて立ち寄った服屋、彼と歩いた公園、彼がよく微笑みかけていた散歩中のトイ・プードルーー。全てが彼と結びついて、深い悲しみの感情を呼び起こした。仕事で紛らすことはできたが、何かのきっかけでふっと彼の顔が浮かぶ。私を見つめて微笑むときの、優しい眼差しが。  彼の夢を何度も見た。夢の中で彼はカメラを肩にかけて笑っている。いつもの下品なジョークを飛ばして、「笑えよ」と言ってくる。  起きて彼がいないことに気づいて、大きな虚無感と悲しみに襲われて涙が溢れてくる。  私が泣いていると、いつも足元で寝ていたベンジーがむくりと起きて頬を舐めて慰めてくれた。トレヴァーはベンジーのことを「アホな犬だが純粋でいい奴だ」とよく言っていたけれど、ベンジーは実はすごく賢いと思う。
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