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彼と出会ったのは、2008年、今から15年前のことだった。
スコットランドの田舎町で生まれ育った17歳の高校生の私は、自身のセクシュアリティに人知れず悩みながら、学校ではクラスメイト達からの虐めに耐える暗い高校生活を送っていた。
孤独で相談相手に飢えていた私は、ゲイ用のマッチングサイトに登録し友達を募集した。だが絡んでくるのは少年の身体目当ての変態親父ばかりでいい加減うんざりしていところに、一人の男からメッセージが届いた。
彼の名はトレヴァーといった。私より5歳年上で、顔写真を見る限りハンサムとはいえないが優しげな雰囲気だった。職業は動物写真家、趣味は読書と犬の散歩。相談相手には良さそうだと思いメッセージを返した。
トレヴァーは気さくで、いつも私の心を明るくするようなメッセージをくれた。「おはよう」から「おやすみ」まで、毎日他愛無い会話を繰り返した。
やがて私たちはチャットアプリで会話をするようになった。女っぽいという理由で学校で虐められていると打ち明けたら彼は、『そいつらを連れて来い。僕がミンチにしてやる』と言った。
彼はいつも自分の家の犬や旅先で撮った動物の写真を送ってくれた。道端の野良猫やサバンナのライオン、シマウマの群れ、水浴びをするカバの母子の姿ーー。それら全てに動物への純粋な愛と敬意が感じられた。
彼のジョークのセンスは最低で、子どものような下品な冗談や寒い親父ギャグを飛ばした。全然ツボじゃないのに、何故か救われていた。
気づいたら、私は彼に恋をしていた。
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