昼過ぎの死角

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店内は流行りの曲が流れ、買い物客で賑わっていた。 穏やかな小春日和の冬、平日の昼過ぎのスーパーマーケット。遅めの昼食をとるため弁当などを買いに来た客もいれば、夕食の下ごしらえのために肉や野菜などをたくさん買い物かごの中に入れている客もいた。 私も買い物かごを持ち、店内をぶらついていた。しかし、視線は今日の特売品などに向けられてはおらず、客の一人一人の挙動に向けられていた。 万引きジーメン。 世間ではそう呼ばれている。テレビの特番なんかでも出てくる人物。 まさに私がそうだった。 四十を過ぎた中年女性。この役柄にはうってつけかも知れない。 この仕事を始めてかれこれ五年近くになる。何故、この仕事を選んだのか、もちろんテレビの影響もあり、格好いいと思ったのも理由のひとつだが、一番の理由は正義感だろう。不正な行為は許せなかった。
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