138人が本棚に入れています
本棚に追加
第3章 3 入れ替わり後の初めてのチェンジ 2
「ロザリア様、ジョバンニ様がいらしていますけど、どうされますか?」
新しく作られた屋敷の中に作られた私専用の小さな厨房で、調理実習の訓練をしているとメイドさんAが私を呼びにやった来た。
「え? ジョバンニ様が?」
「どうされますか?」
「ええ、勿論……」
笑顔でお受けしようかと思っていたのに、次の瞬間私の口からは思いもかけない言葉が飛び出してしまった。
≪会う訳ないでしょう?≫
「会うわけないでしょう?」
ええっ? な、何故思ってもいない台詞が……!? 私は自分で自分の言った台詞に驚いてしまった。
「はい、では追い返しておきますね? 大体あの方は図々しすぎます。今まで散々ロザリア様をないがしろにしていたのに、痩せてお美しくなられて、しかも学年でも注目されるようになった途端、ロザリア様にすり寄ってくるなど最低です! 今のロザリア様なら選り取り見取りなのですから」
メイドさんAはそう言うとさっそうと厨房を出て行こうとする。
「駄目! 待って頂戴!」
私は慌てて引き留めた。だって婚約者のジョバンニ様がわざわざお休みの日にはじめて会いに来た下さったのに、追い返すなんてとんでもないわ! 是非、ここはテラスでお茶をご一緒しなければ!
「何でございましょうか? ロザリア様」
メイドさんAが怪訝そうな顔で振り返る。
《ついでに塩をまいて来てくれる?》
「ついで塩をまいて来てくれる?」
ああ! ま、また勝手に私の口が動き出す!
「塩をまく……? 一体それはどういう意味なのでしょうか?」
「ええ、塩をまくって言うのはね、物を清めるって意味なのよ。ジョバンニの来た痕跡を消すには塩をまくのが一番だと思わない?」
ああ! 私は何て事を言ってるの!? こんな思ってもいないことを口に出してしまうなんて……これは絶対に里香さんの陰謀に決まっている!
「なるほど、そういう事ですか? ならジョバンニ様にも塩をまいたらいかがでしょう? あの方は邪念の塊のような方ですから」
メイドさんAはナイスアイディアと言わんばかりにポンと手を打つ。ちょっとぉっ! 何て事言うのよ!私のジョバンニ様に!
「そうね。いい考えだわ。好きなだけ塩をぶっつけてきて頂戴」
いや~っ!! またしても思ってもいない言葉が口をついて出てくる……! しかも口角が上がっているのが自分でも良く分かる。これは……私は笑っているんだっ!!
「それでは行ってきますね~!」
メイドさんAは塩の入ったツボを抱え、スキップしながら厨房を出て行ってしまった。1人きりになった私は里香さんに呼びかけた。
「里香さん……そこにいるんですよねえ?」
《もちろんいるけど? それにしても危ないところだったわねえ。ロザリア、貴女私がいなければジョバンニをこの屋敷へ招き入れていたでしょう?》
「あ、当たり前じゃありませんか! あの方は私の婚約者なのですよ? 当然ですっ!」
《ねえ? 本気で言ってるの? あの男はねえ貴女と言う婚約者がいながら、目の前で堂々とセレナと付き合っていたのよ? おまけにロザリアがあだ名で呼ばれた時も関与せず、いじめられているのを知ってるくせに見て向ぬふりをしてきたのよ? そんな男のどこがいいのよ? はっきり言ってクズよ? クズ》
「だ、だけど……素敵じゃないですか!」
向きになって言うと、里香さんが鼻で笑った。
《は? あんな男のどこが? あのレベルの男なら世間に履いて捨てるほどいるじゃないの? さっさと婚約破棄してしまいさないっ! そして別の少年との恋を見つけるのよ!》
しまいに里香さんは無茶苦茶な事を言い出すのだった――
最初のコメントを投稿しよう!