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それから二人は月を眺めながら唐揚げを一緒に食し、パック容器が空になると男はイツキを地上に下ろした。
「我は非常に満足した。ゆえに人間、今後も供物を捧げよ」
「……早河イツキだ」
「む?」
「オレの名前。人間じゃなくて、早河イツキな」
「ほう、良い名だ。では改めて早河イツキ! 我に供物を捧げよ!」
「はいはい。気が向いたら、また持ってきてやる。だから他の人には同じような事するなよ」
「うむ、良かろう」
他の誰かが、この自称カミサマに絡まれるくらいなら、自分が面倒事を引き受けよう。そう思ったイツキは仕方なく、男の命令を了承した。それなのに、男があまりにも嬉しそうな顔で笑うものだから、イツキはうっかり絆されそうになる。
「そんじゃあ、イイ子にして待ってろよ」
「うむ、また来るが良い」
男に心を許してしまいそうになったイツキは早口で一言だけ口にすると、急いでその場から立ち去る。
数歩進んだところで、イツキが振り向くと、男はニコリと笑った。
――絶対、あんな得体の知れない男に絆されたりしない。
そう決意したイツキは帰路につく。しかし、彼が自称“鳥居の神様”と打ち解けるまで、大して時間は掛からなさそうだ。
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