誰の彼女 6

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誰の彼女 6

 祐輔が近づくいて来て、私が寄りかかっているショーケースのすぐ右側のお洋服の山の中から、カチャカチャとハンガー同士をぶつけて、何度か隙間を作っている。  こいつは背丈が同じだから、ハイヒールを履いている私が上半身を丸めている今、ちょっとだけワタシノオトコぶるつもりだ。  何してるんだろう、このスペースはレディースものしかないのに。  ああ、そうか。レディース。なるほど。  選んでるんだ、私に。  古着屋さんにある、私にはちんぷんかんぷんなお洋服を。  気まぐれな、祐輔らしい。  もしかしたら、元気にしようとしてくれてる?  まーさかーないないない。  くすんだ虹色カラーのフードつきパーカーを引っこ抜いて、私の背中に合わせて、それからやっと床にあるソレに目を落とす。 「あれ?客いたの?片づけなくていいのかよ、バイト」 「バイトじゃないもん。これはやっさんが脱いだやつだよ」 「おまえら何してたの、こんな白昼堂々」 「何もしてないよ。あれだね、やっさんは、下着まで手を抜いてないね」 「見習えば」 「うるさいじゃ、」 「じゃんじゃんじゃーん、じゃじゃんーじゃーじゃーん」  祐輔が私で遊んでるのなんかいつものことじゃん、じゃんじゃんじゃーんだ。慰めてくれることを期待した記憶は出会ってから2年間で1度たりともない。  って言うかやめて、そのじゃんじゃんじゃーんのメロディ、前に会った時に観た映画のエンディングじゃん。めちゃくちゃ切なくて、つらくて、ってなお決まりのお涙頂戴シーンで、私が必死で泣くの我慢してたやつだ。
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