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 膝を折って更に近くで凝視すると、石に見えていた黒色の塊は、非常に小さな昆虫が寄り集まって形成されていることが判明しました。米粒を半分にしたくらいの昆虫がぞわぞわと蠢いておりました。  急ぎ部屋からピンセットと観察ケースを持ってきた私は、塊の中から一匹をピンセットで摘んで観察ケースへ放り込みました。ケースの中の昆虫に目を凝らしますと、甲虫の特徴が見受けられました。黒色の身体は厚みがあり、頭にクワガタに似た二対の大顎らしき物が見えます。新種の昆虫に違いない。興奮して足元に目線を戻すと、黒色の塊は忽然と消えていました。  私は作成中のレポートなど忘れ、その甲虫の観察に没頭しました。スタンドライトの光を当て、ピンセット突いてみたり、霧吹きで水をみたり、温度を変えてみたり、色々試しましたが微動だにしません。何より参ったのはエサの問題です。昆虫ゼリーや魚肉ソーセージ、植物の葉や花等、何を投入しても反応しないのです。  翌日、その甲虫はケース内を端から端へ移動していましたので、生存は確認出来ました。そして一つ、新たな発見がありました。何をしても反応を見せなかった甲虫が、私の呼気に反応を示したのです。活発にケース内を駆け回り、明らかな興奮状態が見て取れました。
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