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雲一つ無い満月の夜。
月明かりが君の姿を映し出していた。君の姿は圧倒的に美しくそして絶望的な恐怖そのものだった。
黒いストレートの長い髪を靡かせ無数の骸を踏みつけ紅い瞳で僕を見据え見下ろす。
綺麗な口元には牙が見え先程までくらっていたであろう血が滴る。
僕は蛇に睨まれた蛙の如く動けずにいた。いや、それ以上に彼女の美しさに心奪われていたのかも知れない。
「汝は何故逃げない。妾が怖くは無いのか」
彼女の突然の問いに私は直ぐに答える。
「怖い。だが、それ以上に美しい」
「ほう、圧倒的な恐怖の前にその様な事を申すか。ならば、我が眷属に加えてやろう」
彼女はそう言うと僕の首元に噛み付く。彼女の牙が首に食い込むのを感じながら僕は彼女の眷属になる愉悦に浸っていた。
月下の君は美しくそして圧倒的に恐怖そのものだから……。
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