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「ケーキも買ってきたよ。」
「お?マジか。なんか、クリスマスみたいじゃん。」
「そうだよ。イブだし。」
「だな。ありがとう。」
ケーキとジュースで乾杯した。
アイスはまたあとでって、冷凍庫にしまったからもう少しお預け。
「キッチンのむこうにバスルームあるからさ。適当に使っていいぞ。着替えは無いけどな。バスタオルもかごの中の適当に、使っていいから。」
「え?いいの?でも、1日くらい入らなくても大丈夫だよ。それより、なんか、お世話すること、ある?してほしいこと、とか。」
__したいことなんかひとつじゃん
なんて彼が心の中で突っ込んでることなんか知らない。
「遠慮、すんなよ。風呂くらい、ゆっくり好きに使ってよ。色々世話かけて、悪いな。」
「じゃあ、そう、するね。恒介君はどうする?」
「ああ。俺もなんとかして入る。」
「じゃあ、先にどうぞ?」
「そうだな。」
「なんか、手、貸す?服、脱げる?」
「なに?俺のこと、脱がして洗ってくれんの?一緒に入る?」
「ばか。」
「ジョーダン。大丈夫。困ったら大声で呼ぶから。あ!悪い、そうだ。ベランダの洗濯物、いれてもらっていいかな。」
「あ、出しっぱなし?やるやる。そういう時のために今日は居るんじゃん」
__別にそうじゃないけどな…。俺が居てほしかっただけだし…?
なんてまた彼が心の中で呟いてるのだって聞こえるはずがない。
急いで冷えた洗濯物をとりこんだ。
「ちょうど俺の着替えあったわ。」
そう言って彼が洗濯物の山からジャージとパンツを発見。それをつかんでハイハイして、彼はバスルームに、消えていった。
残りの洗濯物の山から一つずつ取って畳んでいく。一つ一つがとにかく大きくて重い。おじさんの作業着なんか、本当にごわごわして重い。こんなの着てやってるんだ…。って思いながら。
あれ、なんか、あたし、ここにいる必要ある?
お風呂も普通に入れるし。トイレだって行けるじゃん。看病も付き添いも、要らなくない?
そう思ったけどそれを口にするのはやめた。だって。やっぱり一緒に居たかったから。怪我人に付き添うなんて、かこつけて。それがただの口実なのはわかってる。彼だってきっとわかってる。
彼と入れ替りでお風呂をいただいた。
湯上がりの彼はなんだかとても大人っぽかった。濡れた髪の毛がますます男らしい雰囲気になってキュンキュンした。すっかりゆでダコみたいになったあたしも、湯船であったまったせいか、照れたせいか、ほっぺが真っ赤に染まっている。
「暑いね。アイス食べようか。」
「そうだな。アイス、あったよな。」
二人で顔を赤くして向き合ったりして。彼もなんとなくぎこちない顔で目をあわせない。
黙ってアイスを二人で食べた。テレビの音だけがうるさく部屋に響く。
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