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そこにちょうど恒介君たちが通りかかった。
「あれ?紺野じゃん、なにやってんだよ。おまえ、そこで…」
こっちをみてあたしと目が合うと、恒介君が眉をひそめた。
「今日はないだろ?試食」
「残念ながら、無いんだってさ」
「残念ながらって、なんだよ。お前は関係ないだろ?メンバーじゃねぇんだから」
「へいへい。そうでござんした」
ヘコヘコしながら紺野くんが廊下に向かった…。
「じゃあね、紫村さん、またくるね。」
そう言ってあたしに手を振った。
「なにがまたねだよ、お前は部外者なんだから、もう来んな。」
ポカリと恒介君が笑いながら紺野君の頭をはたいた。ペロッと舌をだして紺野くんが笑いながらこっちに笑顔を振り撒きながら去っていった。
あたしはさっきから、沢井さんと井上さんの冷たい視線が痛い。
「紫村先輩、いつの間にあんなに仲良くなったんですか?なんか、紫村先輩ばっかり、ズルい…」
井上さんはこうやってズケズケと言いたいことを嫌みなく言ってくる。
それが全然嫌な言い方じゃないからすごいと思う。愛嬌っていうの?お笑い芸人みたいに何でも笑いに変えちゃうし。
真面目な沢井さんはちょっと気まずそうにあたしに作り笑いをした。
「ほら、恒介君のともだちだからだよ。ほんと、ただそれだけ…」
あたしも言い訳みたいにしてるけど、なんだか自分でもどうしていいのかわからない。
しばらくすると、またイケメンたちが通りかかった。
「あれ?恒介見なかった?」
金髪に青い目の大河くんと、アイドルみたいな碧斗君に誠也くん。
「あれ?さっき紺野君と外廊下の方に向かって行ったけど?」
「おっけ。サンキュー。またね。菜緒さん…」
大河君がこっちに手を振った。
すっかりあたしたち、友達みたいになってるじゃん。あんな、一回出掛けただけなのにさ。
また恨めしそうな冷ややかな視線を横顔に感じる。
「いいよなー。マジで。先輩羨ましいわ。あ、でも、あたしは香田派だったわ。でもさぁ、香田先輩には、好きな人がいるらしいって噂なんだよねー。」
井上さんが、そう言った。
うちの学園のもうひとつのイケメン集団…。私より一つ上の学年の、三年生にも、最強のイケメン集団がいる…。
香田組、と人は彼らをそう呼ぶ。
三年生は、みんな背も高いしワイルド系男子もいたり、ガタイのいい人もいる。妖艶で美しい香田さんを中心にとにかくイケメンがいつも集団で中庭にたむろしてるから、みんな彼らを香田組なんて呼んでる。
今年入ってきた大河くんや恒介くんたち彼らに対抗意識を燃やしてるなんて噂が流れるほど。
一年生の恒介くんや大河くんや碧斗くん、誠也君が霞んでしまう位、彼ら香田組は貫禄と存在感がある…。女子は大概どっち派かに好みが別れる。
あたしは、断然。恒介くん…。
なんてね。
なんて、言いそうになる自分に驚く。なに言ってんだよ。私ごときが。
ちょっとお弁当一緒に食べたくらいで調子にのって。なんて、自分でつっこんだ。
別に、あたしたちは、付き合ってるわけじゃ、ない…。
誰なんだろ。噂の香田先輩の好きな人…。
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