放送室から愛を込めて

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放送室から愛を込めて

 朝、学校に行くと、あたしのロッカーに貼り紙がしてあった。  紫村菜緒は貧乏臭い弁当屋の娘なのを隠してる!  とか。  ニコニコ弁当はイケメンな彼らを利用して店の宣伝してる。味はそこそこだけどイケメン票で稼いでる!  とか。  これはいじめに繋がるからといって、先生がこの問題をすぐに取り上げ、急遽、学校全体を巻き込み、一時限目が道徳の時間に変更になった。  今頃、各クラスごとに話し合いをしてる。うちのクラスも話し合いは表面的に当たり障りのない意見が出て、穏やかに行われた。   こんな時に、わたしがやりました、なんて言う人なんかいるわけないし、正直な意見なんて、手を上げてみんな言えるわけがない。  もう、別にいいんだ。知られたって構わないし、何て言われたっていい。   だってさ、あんなに素敵な味方があたしには出来たんだもん。  そう思ったけど。  貼り紙はやっぱり少しショックだった。  いま、各クラスで道徳の時間として話し合いがされているけど。そんなに大袈裟にしなくていいのに。出来ればそっとしておいてほしい。今すぐ家に帰りたい気分だった。  すると、校内のスピーカーがブツブツと音をたてた。みんな一斉にスピーカーの方を見る。  放送室からの音声だ。 「えー。皆さん。ごきげんよう。 今頃みんな、道徳の時間で話し合いをしてると思うけど…。ちょっと耳を貸してほしい。」  あ…。この声。大河君の声だ。 「ちょっと貸して…。」  そう言って代わったのは我らが家庭科部の顧問で、国語の教師で、学年主任という肩書きを持っている先生、大野君代先生だ。 「みなさん、今、学校の許可を取って放送してます。今回の件で、どうしても皆さんに意見を言いたいとの声がありました。  みなさん、それぞれ意見が言いにくかったりするかと思います。こんな、いち意見もあると言うつもりで、どうか彼らの意見を聞いてほしいと思います。」  すると次に代わったのは碧斗くん。 「みんなさ、貧乏くさいとか?弁当屋の娘だかとか?そう言うの関係なくない?家柄重視で入学してきたワケじゃ無いんだし。親がどうとかってさ、そんなので見るの、ナンセンスだよね?ボクはさ。ボクの家柄とか、うちの豪華ないろんなもんなんかに、価値なんかちっとも感じてない。それよりさ。大事にしてくれる仲間とか。そう言う方がよっぽど価値があると思うけどね。 どう思う?意見がある人は放送室に来て発表してよ。」  それから代わったのは誠也くん。 「みなさん、陰で悪口とか、こんな貼り紙とか、するの、どう思いますか?もし、言いたいことがあるなら、ここに来て意見を言う方がよっぽどボクはいいと思います。  それから。ボクもあの、お弁当屋さんの大ファンです。ボクも結構通ってるけど、恒介が通ってるからじゃないです。本当に美味しいから。だから、是非、一度味をみに行ってみるといいと思います。」  
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