放送室から愛を込めて

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 それから恒介にかわった。 「今回の件で迷惑をかけた紫村菜緒さんに謝らなければなりません。  勝手に店を宣伝して、流行らせたの。俺だから。別に頼まれたワケじゃないし、なんなら秘密にしてって言われてたのに。  俺が毎日気に入って通ってる店だったから。俺が幼稚園の時から家族でしょっちゅう買いに行ってた店だから。ついみんなに知ってもらいたくて。こんなことになってしまいました。紫村さん。ゴメン。  みなさん、本当にあそこの弁当屋、マジでうまいから是非、行ってみてください。  それから、あんな貼り紙したやつ、今からこっちに来いよ。話ならいくらでも聞いてやるから。」  そんな放送を聞いていた、後ろの方の席で、歯軋りしてた桜ちゃんの顔なんかこっちから見えるはずがなかった…。 「まあまあ。そんなに熱くならずに。」  そういって大野先生がまた登場した。 「みなさん、各クラスで意見を出し合うと言っても、なかなか本音を言うのって、勇気がいると思います。  だけど彼らはこうして皆さんに是非意見を言いたいと願い出てくれました。今回の趣旨を理解してくださった教頭先生にお礼を申し上げます。  この後も、もし、意見を言いたいという生徒がいれば、放送室で待ってます。ラジオのパーソナリティーにでもなった気分で、残りの四十分間の道徳の授業に、放送室からの参加を是非、お待ちしてます。  聞いている生徒の皆さんも、ラジオのリスナーにでもなったつもりで耳を貸してもらえたらうれしいです。  放送室から。愛を込めて。ここまでの放送は、大野がお伝えしました…」  なんだか胸があつくなった。  あたしも急いで放送室にむかった。 「みんな、ありがとう。」  放送室につくとそこにいたみんなに頭を下げた。 「大丈夫。俺たちがついてる。」  恒介くんがそう言ってあたしの肩を叩いた。涙がでた。  それからあたしも放送室のマイクを使って、学校のみんなに語りかけた。 「みなさん、紫村菜緒です。  今回の件でお騒がせしてすいません。  今日、こうして意見を言ってくれた彼らにも感謝します。ありがとう。  私は胸を張って明日からも自分のうちが弁当屋で、わたしがそこの娘であることを誇りに思い、過ごしていくつもりです。口コミはそれぞれだし。感じかたもそれぞれだから。すべてのみんなからよく思われようなんて思いません。うちの店の味が好きじゃない人もいると思います。うちの店の味を気に入ってくれる人がいたら、その人のために明日も頑張ろうと思います。ありがとうございました。」  なんか、うそみたいな今日の出来事。  突然、授業中に放送室をジャックして、あんな風にしてくれた彼らにも本当に驚かされた。  それを許した、我らが家庭科部の顧問の大野先生の依怙贔屓には脱帽だ。  完全にメーターが振りきってる。  あそこまで彼らに肩入れするとは。  かえってあっぱれだ。  でも、すごく嬉しかった…。  その日を境に、店に立つあたしは、マスクもだて眼鏡も外した。
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