夏休みの奇跡

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 恒介くんが再び私に声をかけてきた。 「えっと…。あのさ…」 「え?ああ。注文はいつものやつでしょ?チキン南蛮、最後の1個だったから、こっちに取り置きしておいたよ。来ると思ったし。」  そう言って売り切れで、なくなったはずのチキン南蛮の入ったビニール袋を後ろから取り出して彼の目の前に掲げた。 「あ、ありがと…。」  メニューのチキン南蛮に売り切れの赤いバッテンを貼った。 「あ"ー、だから、そうじゃなくて。」  恒介くんの様子がへん。  いつものようにレジを打って会計をして。お金をもらう。  その間なんとなく二人とも無言。  すると…、なんか言いずらそうな顔をした彼が口を開いた。 「あのさ…。 少し話す時間ある?」 「え?」  どうみても、今、レジに列が出来てるし、話す暇、なくない?  レジにお金をしまって顔を上げた。 「今度さ。デートしないかなって。俺と。」 「ええ?なに?」  割り箸を袋にいれていた手が止まり、見上げたその目が思わず飛び出そうになった。 「だからさ。デートだよ。デート。何度も言わすなよ。」  真っ赤になった彼と目が合う。  デート?いま、デートって言った?  デートってさ、普通、好きな人同士がする、あれだよねぇ。手繋いだりキスしたりする二人がするやつだよねぇ…。彼とのそんなこと、想像しただけで今から気を失って倒れそうだ。 「あたし?え?だって…。そんな。急に…。」  急におろおろとして意味もなくレジのまわりのカウンターの上をフキンで拭いたりしてる。 「別にさ、急にじゃないだろ?俺たち…」  恒介君の後ろのおばさんが、どいてと言わんばかりに早く注文したそうにわざとらしく覗き込んできた。 「でも、え?結子が、好きな人がいるからって断ったって…」 「あいつのことはもう、いいだろ? 約束どおりちゃんと一回は会ってやったんだからさ。断ったっていいだろ?」  それはもう、聞いてるかけどさ…。 「おねぇさん、いい?」  後ろの人から声がかかる。 「あ、はい、すいません」 「ハンバーグ弁当二つね。大盛りで」 「はい、ハンバーグ二つですね。」  レジを打ちながらおばさんの横にいる恒介君をチラリとみた。 「で?返事は?」 「え? じゃあ、結子が言ってた好きな子って、もしかして…」 「ああ、その話?それ、どう考えても普通にお前のことじゃん?もしかして気づいてなかった?」 「え?なんで?」 「は?なんでってこっちがなんでだけど?どうみてもそうじゃん? 俺たち…」 「え…」  突然すぎる展開に頭が追い付かない。嘘でしょ?夢ですか?これ。 「で、どうなんだよ。お前の気持ちは。」  彼はいつもそうだ。真っ直ぐで…、正直で…、少し強引だけど、優しくて…、いつも直球勝負だ。 「え?ていうか、今、あたし、お店の接客中ですけど?」  
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