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エピソード2~恋のゆくえ②秋の思い出~
中学三年生になった。
そのまま内部進学をして。
そしたらあたしは学園の高等部に進む…。
まだ中等部の一つ年下の彼とは同じ敷地内とはいえ、そうなると校舎が別になる。なかなか学園内ですれ違う機会も減ってしまうようになる。
そうなっても、あたしたちはずっと一緒にいられるのかな…。
最近はそんなことが頭を掠める。
相変わらずのあたしたちは今もお弁当を一緒に食べてる。
相変わらず彼はうちのお店に足しげく通い、時々店の外で会っては他愛ない話をして帰っていく。
そんなある日、彼の家に行った。
おうちは工務店の事務所兼、自宅。
一階は倉庫と事務所。二階、三階と四階が住まいの立派な家。ちょっとしたビルのようなおうち。
彼にはサトリさんという年の離れたお姉さんがいた。
将来は弟の彼が、この会社を継ぐらしい。
「こんにちは。」
いつもうちに買いに来る常連さんのよく知った顔のおじさんが彼のお父さん。
「あー。ニコニコ弁当の看板娘が来たな。菜緒ちゃん。いらっしゃい。」
おじさんはあたしたちが付き合いだしたのも知ってる。彼がすぐに言ったから。ちなみにあたしの方はあれっきり、特に親に報告も何もしてない。店の前で家族の前であんな風に言われたから、みんなわかってるはずだけど、特に何も聞いてこなかった。
だからあたしも何も言わない。
「元気だったか?」
「うん。おじさんもね。秋の新メニュー出たよ。」
「ああ、今度また行く。
恒介、出掛けてくるぞ。
菜緒ちゃん、ゆっくりしてってな。
襲われんなよ。あいつに。
お前も。無理やり襲ったりすんなよ。」
「するかよ。アホ。」
おじさんはフランクな人だ。
事務所で電話がなってる。
事務員さんが電話で応対してる豪快な声がこっちまで聞こえてる。
「行こ。」
二階のリビングを抜けて三階の恒介くんの部屋に行った。
初めて来たときは本当にドキドキした。ついに『その日』が来るって覚悟してきたのに。
彼は結局、あたしに何もしなかった。
彼はすごく真面目だから。
今日だって全然そんな雰囲気になんか、全然ならない。それが少し不満に思えるくらい…。
あたしも年頃だし、カップルになったら、なんて。あれやこれやと色んなことにも興味津々。なのに…。
まだ幼い君にはまだ早いのかな?なんてね。男の子の心の中なんてわからない。
やっぱ、魅力無いのかな…。まだ、あたし、幼くて色気が無いのかな…。
だから、そんな気分になれないのかな…。なんてね。
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